2009年 06月 09日
ギャラリートーク |
11年前、学生とともに結成した造形集団CHIPSの一人である渡辺さんの個展が本日8日まで新宿のニコンサロンで開催された。ギャラリーの企画展に選ばれたという話を本人からの年賀状で知り、それ以降ずっと楽しみにしていた写真展である。ギャラリートークと題して作家が作品解説する時間があるという6/6、時間を合わせて伺った。
会場は懐かしい顔ぶれも多く彼の人柄の良さも伺えた。また彼の同学年やその前後の友人の年齢がちょうど自分の生き方の方向を見定める、または社会においてのポジションを明確にし始める年齢だったこともあり、卒業後、努めてさまざまな環境に身を置きながら、シャッターをひと押しひと押ししてきた彼が、ひとつの評価の形として個展を企画されたことは、彼ら一人ひとりの気持ちを勇気づけるのにも十分だったと言えるだろう。
ギャラリートークでは、世界を移動しながらシャッターを押すことで、自分が何を撮ろうとしているかが徐々に見えてきたという彼は、それらを大まかに3つにまとめて語った。
①風景のたもと
(巨視と微視/全体を意識する目を持ちながら地上の小さなひとつひとつにも目を向ける。)
②日本の失ったもの
③人ということ
(自分を含めた人間というものが、宇宙規模で考えると極めて小さな分子であるということ。それは悲観的な意味ではなく、小さなかけらながらも地球上に生かされ、大きな可能性を有しているという事実)
3つとも深く心を刺激したが、特に3番目は懐かしささえ感じた。
正に当時、CHIPSとして共に活動していた価値観が、彼の中の種として土から顔を出して光を浴び始めたようなものである。つねに養分を吸収しながら大切なもの撮り続けてほしい。
銀座ギャラリーQで作品を展示した、CHIPSのメンバー3人と記念写真を撮った。
(皆、力量を発揮できる専門領域で活躍している)
どの写真の笑顔も最高だ。
やはり彼は最近まで豆腐屋さんで勤務していたらしく、リアカーを引きながらひたすら仕事にも没頭していたと言う。仕事で知り合ったお得意さんのおばあちゃんにも今回の展覧会の案内をしたら「さすがに新宿までは足が痛くて歩けないね」と言われたそうだ。極めて当たり前の日常会話を聞き、穏やかな微笑みとともに会場は和んだが、おばあちゃんのことを思うと少し寂しくもあった。
しかしきっと長く生きてきた彼女にとっては、どのような作品であるかを見るまでもなく、作品を生み出すコアである普段の彼自身をみながら、その作品を網膜に投射できたに違いない。
by osamk37
| 2009-06-09 00:09
| アート